先月、スイス、フランス、ノルウェー、フィンランドの4か国6都市を旅してきました。
今回は特に「働くこと」そのものについて、いろいろ考えさせられる旅になりました。
目的はいわゆる観光ではなく、家族や親戚、友人たちに会うことでした。スイスのモンブラン登山、フランス人家族の休暇先への合流、フランスとノルウェーでのレンタカードライブ、北欧でのハイキングとアート探訪。振り返ると盛りだくさんの旅でしたが、どの瞬間も心に残っているのは、住人に会ってきいた現地の暮らしそのものです。
もともと私は、旅行では観光名所を巡るよりも、現地の料理を食べたり、現地の人と話したり、その国の社会を肌で感じたりするほうが好きです。スーパーやマーケットを覗いて市民の生活を知ったり、一般家庭にお邪魔したり、美術館や博物館を巡ったり。
今回は現地に住む人たちを訪ねる旅だったので、生活の様子や就職事情まで、住人目線の生の情報が耳に入ってきて学びも多く、楽しみも倍増でした。特に、私のコンサルティングのクライアントさんたちも目指すヨーロッパでの就労について、改めて考えるいい機会になりました。その中でも印象的だったのが、シェンゲン圏ならではの国境の越え方でした。
シェンゲン圏というのは、加盟国同士がパスポートチェックなしに国境を行き来できる仕組みを持つ、ヨーロッパの国々のグループです。現在ヨーロッパの29カ国が参加していて、スイスやノルウェーのようにEUに加盟していない国も含まれています。日本のパスポートの保持者は短期滞在ビザが免除されています。今回訪れた国はすべてこのシェンゲン圏に含まれています。
最初にスイスへ入るときは、さすがにパスポートコントロールがありました。ここまでは普通の海外旅行と同じ感覚です。でもジュネーブからフランスのシャモニーへバスで向かったときは、道端に国境の看板が出ているだけで、そのまま素通り。レンタカーでスイスとフランスの間を何度か移動しましたが、気づいたら別の国に入っていた、というくらいあっさりしたものでした。
スイスからドイツ経由でノルウェーへ、ノルウェーからフィンランドへと飛行機で移動したときも、預け荷物を受け取ったらそのまま外に出るだけ。小さな飛行機で数時間、隣の国へふらっと飛ぶ人も多く、機内持ち込み荷物だけの身軽な旅行者もたくさん見かけました。まるで隣の県に遊びに行くような軽やかさです。
ノルウェーの絶景スポット、ロフォテン島を訪れたときも、フランス、ドイツ、イタリアから来たキャンピングカーでいっぱいでした。ヨーロッパに住んでいると、周りの国へ気軽に旅行できてしまうんですね。
今回の旅行では、何度国境をまたいだか正直数え切れません。日本や私の住むオーストラリアのような島国だと、海外旅行というのはパスポートを見せて入国審査の列に並んで、というイメージがどうしても強いですよね。でもシェンゲン圏を出るときだけは一転してかなり厳しいチェックがあり、この差にも圏内と圏外の違いをはっきり感じました。
ノルウェーとフィンランドは英語がほぼ問題なく通じますし、スイスやフランスも、田舎でない限りたいてい英語で乗り切れます。通貨は3通貨を使い分けたものの、支払いはすべてカードかアプリなので現金は一切使いませんでした。これも複数国をまたぐ旅を後押ししてくれています。
ヨーロッパはひとつの経済圏としてまとまっているので、旅行者にとって便利な面がある一方、働くときにも自由度が高いという利点があります。

まずEU加盟国の国籍を持つEU市民であれば、他のEU加盟国に住んで働くこともかなり自由にできます。これはEUの基本条約で保障された「移動の自由」という権利で、国境検査をなくしているシェンゲン協定とは別の仕組みです。実際、EU加盟27カ国のうちアイルランドとキプロスはシェンゲン圏に入っておらず、逆にスイスやノルウェーのようにEUに加盟していなくてもシェンゲン圏に参加している国もあります。
つまり、シェンゲン圏を自由に旅行できることと、その国で働く権利を持っていることはまったく別の話なんですね。私たち日本人を含むEU市民でない人にとっては、シェンゲン圏内を気軽に行き来できても、実際に働くには別途ビザや許可が必要になります。
でも外国人であっても、EU永住権を持っていると話は変わってきます。EU加盟国への移住や就労のハードルが、ぐっと下がるのです。
イメージとしては、まずどこか一つの国で就労ビザを取得して数年間合法的に暮らし、その実績をもとにEU永住権を取得する、という流れです。一度この永住権を手にすると、他の加盟国へ移る際の条件が、国籍のない状態から挑戦するよりもぐっとやさしくなります。最初の一歩は大変でも、そこから先の選択肢がじわじわ広がっていくイメージです。
「じゃあ実際に、日本人はどうやってヨーロッパで働き始めるの」というのが、みなさん一番気になるところだと思います。
一般的な流れとしては、まず雇用主から具体的な仕事のオファーをもらい、それをもとに滞在許可や労働許可を申請する、というのが基本パターンです。条件は国によって大きく異なるので、ここでは細かくは触れませんが、専門性の高いスキルを持つ人ほど、この許可は取りやすくなる傾向があります。各国とも人材不足を背景に、優秀な人材には積極的に門戸を開いているからです。
こうした一般的な就労許可の中でも、特に高いスキルを持つ人にとって有利な選択肢としてよく知られているのがEU Blue Cardという制度です。ドイツをはじめ、発行数が多い国がいくつかあります。
目安となる条件は、大学卒業以上の学歴、もしくは職種によっては数年以上の実務経験があること、最低半年程度の雇用契約またはオファーがあること、そして各国が定める給与水準を満たしていることなどです。給与水準はその国の平均的な給与の1倍から1.6倍くらいが目安で、国によって幅があります。
このEU Blue Cardが労働者にとって有利なのは、条件を満たせば通常の就労許可よりも早いペースで永住権に近づけたり、配偶者が語学力を証明しなくてもすぐに一緒に暮らして働き始められたりと、家族での移住がしやすい制度になっている点です。加えて、最初に働き始めた国に一年ほど滞在すると、次のEU加盟国へも比較的シンプルな手続きで移動できるようになります。
数字や細かい条件は国や年によって毎年見直されるので、実際に応募する段階では最新の情報を必ず確認してください。ここで大事なのは、細かい条件そのものより、専門性のある仕事にきちんとした条件で就ければ、ヨーロッパでも就労のドアは開かれているということです。
私のクライアントの中にも、このEU Blue Cardの取得を目指して準備を進めている方がいますが、目指す価値のある選択肢のひとつだと感じています。

移民として実際にヨーロッパで働く場合、最近よく選ばれているのはドイツ、オランダ、オーストリア、フランスなどです。どの国も労働市場での人材不足を背景に、専門性を持つ外国人を積極的に受け入れる仕組みを整えていて、特にIT、エンジニアリング、金融といった分野では、海外からの人材採用に力を入れている企業が多い印象です。
なかでも英語をメインに使って働きたいという方には、ドイツ、オランダ、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンあたりが視野に入ってきます。ドイツは大都市の外資系企業やスタートアップ、IT業界では英語だけで仕事が回っている職場が珍しくありません。オランダや北欧諸国は、世界的に見ても英語力が高い国として知られています。
ヨーロッパで働くというと現地語が必須というイメージを持たれがちですが、業界や会社を選べば英語でもなんとかなる場合が意外と多いです。もちろん、現地語ができるに越したことはありませんし、長期的に安定した雇用や生活を目指すなら、いずれ現地語は必要になってきます。
今回の旅では、ヨーロッパの大学院で学びながら働いている親戚にも会いました。ひとりはデータ分析、もうひとりは心理学の分野で、博士課程に通いながら研究者として仕事をしています。
日本の博士課程は学費を払いながら通うのが一般的ですが、ヨーロッパでは博士課程の学生がそのまま大学や研究機関の職員として雇用され、最初から給料をもらいながら研究を続けるケースが多くあります。学費も国によっては非常に安く、修士課程でも学費がほとんど無料に近い国もあります。
海外でキャリアを積みたい人にとって、大学院で専門性を身につけながら現地の生活基盤も作っていくというのは、意外と狙い目のルートかもしれません。
もちろんヨーロッパでの就労のしやすさは、職業、業界、スキル、言語能力などによって変わってきます。ヨーロッパと一口に言っても、国によって移民政策やビザの条件はまったく違います。しかも移民法は各国で頻繁に見直されていて、去年は難しかった国が今年は間口を広げていたり、逆のパターンもあります。
ヨーロッパがあなたに合っているのか、それとも別の国に合っているのか、ヨーロッパの中でもどの国で就職しやすいのかは、個人的な希望だけで決められるわけではありません。あなたにぴったりの国を見つけ、現地採用で海外移住を確実に成功させる6つのキーポイントを押さえておくことが、一番大事な海外転職へのステップです。職種、業界、スキル、語学力、キャリアプラン、家族の状況、そして政治経済やビザの最新動向まで、いろいろな要素を組み合わせて考える必要があり、簡単な選択ではないのが正直なところです。
私のコンサルティングでは、こうした一人ひとりの状況を丁寧に整理しながら、あなたに本当に合った国を一緒に見つけて現地で就職することをゴールにしています。漠然とヨーロッパで働きたいと思っているという段階でも大丈夫です。まずはどんな選択肢があるのか、一緒に整理するところから始めましょう。
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日系企業事務職から外資系ITコンサルタントに転身し、アメリカ、カナダ、オーストラリアの永住権を申請したのち、オーストラリアへ移住・転職。日本と海外の10社以上の会社で、プロフェッショナルとしてキャリアを築く。幸せなライフスタイルと職場環境と求めて転職をしながらキャリアアップしてきた経験を活かし、海外転職を目指す人やグローバルキャリアを構築したい人をサポートしているキャリアコンサルタント。オーストラリア在住。 詳しくはこちら
Profile: Yoshiko Say

日系企業事務職から外資系ITコンサルタントに転身し、オーストラリアへ移住・転職。日本とオーストラリアの10社以上の会社で、プロフェッショナルとしてキャリアを築く。幸せなライフスタイルと職場環境と求めて転職をしながらキャリアアップしてきた経験を活かし、海外転職を目指す人やグローバルキャリアを構築したい人をサポートしているキャリアコンサルタント。オーストラリア在住。 詳しくはこちら
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